みなさんお疲れ様です
さて、今日は視点を変えて、私たちの母国語である日本語について、その難易度を英語と比較して考えてみたいと思います。
私たち日本人が英語を学ぶ際に色々と苦労するのと同じく、英語を母国語とする人たちが日本語を学ぶ際の苦労はいったいどの位のものなんでしょう?
そのことを知ることで、私たち日本人が英語を学ぶ際の様々な有利不利な部分が明らかになってくると思います。
そして、外国語を学ぶこととはどういうことなのか、理解を深めることができるのではないでしょうか?
■もくじ
1.英語より日本語の方が難しい?【外国人にとっての日本語】
1-1.日本語のどこがどのように難しいのか
1-2.漢字の音読みと訓読み
1-3.必須語彙数が膨大な数
1-4.日本語の主語は省略されるので曖昧
1-5.日本語はオノマトペを多用する
1-6.日本語の方言は物凄く多い
2.日本語は難しいだけではない
2-1.日本語の発音は簡単
2-2.日本語の文法も意外にシンプルです
■まとめ
ちなみに、この記事を書いた僕は英語偏差値は38からTOEIC980点・英検1級まで這い上がり、現在でも英語を多用して仕事に取り組んでいるロスジェネ(棄民世代)おやじです。
そんな僕の英語考察のひとつ、ぜひご参考にしてください。
1.英語より日本語の方が難しい?【外国人にとっての日本語】
上の表は、アメリカの国務省が作成した「外国語習得難易度ランキング」
という図表データです。
どの国の外交官でも外国語の習得が基本となりますが、その習得にかかる時間で世界各国の言語の難易度を分けたものがこちらの表なんです。
あくまでこれは英語を母国語とするアメリカ人目線のカテゴリーですが、言語的に近いヨーロッパの言語は、カテゴリー1~4までの部類となっています。つまり、カテゴリー333週間、900時間以内に習得可能という基準なので、アメリカ人のような英語が母国語の人は大体1年以内に習得できるという「比較的簡単」な言語となります。
その上の「カテゴリー4+」には、モンゴル語・フィンランド語・ハンガリー語のユーラシア遊牧民族系言語、東南アジアのタイ語とベトナム語がエントリーされています。
その上の「カテゴリー5」になると、アラビア語や中国語、韓国・朝鮮語がエントリーされています。
その中で、最高難易度の「カテゴリー5+」にたった1つだけ分類された言語こそ、それこそが私たちの母国語である日本語なんです。世界で唯一無二の超難関言語なのです。
日本人の私たちがそう言われてもピンときませんよね(笑)
むしろアラビア語やペルシャ語の方がよっぽど難しいんじゃないかと思うのですが、アメリカ人的にはそれ以上に日本語のほうが難しいとのことなのです。
1.1-日本語のどこがどのように難しいのか
それでは一体日本語のどこが、どのように彼らにとっては難しいのでしょうか?
日本語を勉強している外国人にそのことを訪ねてみると、殆どの人がまず指摘するのは漢字です。(漢字を使う中華圏の人は除きます)
常用漢字の数は実にその数2,136字です。
私たち日本人はこれらを、義務教育の9年で習います。
それらをいざ非漢字圏の外国人が覚えるために必要なエネルギーとは一体どれくらいのレベルになることでしょう・・。おそらく心を病んでしまう位のレベルなのかと思いますし、実際にメンタルが弱ってしまう人も結構居るんです。
ゆえに、この漢字の壁で日本語学習うを挫折する外国人は多いんです。
ちなみにこの日本語の漢字のことを英語で、「Kanji」と表記することが増えてきているんですよ。漢字は元々中国から来たものなので、”Chinese character”となるはずですが、最近は「Kanji」と表現されることが多いんです。中国人的には実に面白くないでしょうね(笑)。
この「Kanji」学習は非漢字圏の外国人が日本語を学ぶ際には「Punishment(懲罰、制裁)」なんて言われることもあるくらいなんですよ。
しかし、日本語の難しさとはこの漢字だけではないんです。
漢字だけが難しいのであれば、覚えてしまえばそれで終了ですよね。まさにド暗記が出来てしまえばそれで解決です。
しかし、外国人の日本語学習者にとってはこの漢字以外にもまだ難しい所が有るんです。
1-2.漢字の音読みと訓読み
漢字だけなら、漢字の総本家中国語も同じじゃないかという意見もあります。しかし、日本語と中国語の漢字の大きな違いは、一つの漢字に複数の読み方があるということなのです。
中国語には、基本的に一つしか読み方は存在しません。複数の読み方も多少は有るものの、それは極めて例外的なケースなんです。
しかし、日本語はそうはいきません。
日本語の漢字には「音読み」と「訓読み」の2つの読み方がありますよね。
音読みの中にも種類があって、大昔に漢字が日本に伝来したその時々の中国の王朝によって「漢音」「呉音」「唐音(宋音)」に分かれています。「京」だと漢音が「けい」、呉音が「きょう」、唐音が「きん」という風に、いくつもの読み方に分かれ、さらにどれをどう発音するかは単語によるので法則は無いんです。
しかも「当て字」まで有るんです。当て字とは、日本語を漢字で書く際にに漢字の音や訓をその字の意味に関係なく当てがう漢字の使い方です。
例えば、「目出度い」「呉れる」、または「六かしい(むつかしい=難しい)」などもそれに当たります。このような当て字は昭和初期以前の文学作品などには多く見受けられ、夏目漱石は当て字の天才と言っていいほど、文面に当て字を多く使用しています。
1-3.必須語彙数が膨大な数
19世紀ヨーロッパでは、英語とフランス語が、その国際共通語の座を争っていました。結局英語が勝利したのですが、その理由の一つに単純な文法の仕組みが有るように思えます。
フランス語やスペイン語やドイツ語に比べれば、英文法はかなりシンプルなものなんです。
一方で、僕が英語は難しいと感じる部分、それは”recognize”と”acknowledge”のように(両方とも認めるというような意味)のように、同じ意味の単語が物凄く多いという所です。
ちなみに日常会話に必要な語彙数は、フランス語はだいたい900~1200程度、それに比して英語の必須語彙数は、おおむね2600~2700語と言われています。つまりTOEICに例えると、その語彙数は700点レベルに匹敵するんです。
これが日本語の場合どうなるのかと言いますと、諸説ありますが大体7000~10000語くらいだろうと言われています。新聞を完全に理解できるレベルの語彙力となるとこの1.5倍は必要と言われています。
さらに、文学作品や論説文のようなハイレベルな文章ともなると、慣用句や古語、そして俳句の季語など、もはや数えることすらできないくらいの語彙力が必要になるのです。
1-4.日本語の主語は省略されるので曖昧
日本語の大きな特徴の一つ、それは主語がはっきりしない場合があることです。それに比べて英語は、「主語(S)+動詞(V)+目的語(O)」の形が必ずはっきりと表現されるので、慣用句などを除くとこの語順が変わるということはまず無いのです。
英語に限らず、ヨーロッパ系の言語は基本的には主語を省略することが出来ない文法的仕組みになっているのです。
日本語の主語省略の特徴、それは負うべき言語のそのような法則などは無縁のごとくやりたい放題です(笑)
つまり、「主語が誰かは文の流れから察してください。忖度してください。」というスタンスなんです。
忖度を知らない外国人には理解不能ですよね(笑)
例文をひとつあげてみましょう。
先生「給食何が食べたい?」
生徒「うな重がいいっす」
先生「ダメ、予算オーバーだわ」
生徒「まじすか!そんな殺生な!」
他愛もない会話ですが、これら全部主語が抜けていますよね。
私たち日本人なら習慣で主語がわかりますが、その訓練を積んでいない外国人にはチンプンカンプンなんです。
これを英訳しようとすると、そのことがよくわかります。
英訳の第一歩は、主語が誰なのか・何なのかを明確にすることから始まります。そして、上の会話をを英語に訳してみるとこのようになります。
先生:What do you want to eat for school lunch ?
生徒:I would like to eat Unajyu (Eel rice box).
先生:No, it‘s impossible ! It‘s over the budget !
生徒:Are you serious ? Oh my gosh !
赤文字部分の単語が主語ですが、必ず何かしらの主語があることがお解りいただけますよね?
つまり、主語の記載がない日本語とは真逆なのです。
1-5.日本語はオノマトペを多用する
「オノマトペ」とは、擬音語と擬態語(擬声語)のことで、フランス語の”onomatopee”から来ています。
日本語のオノマトペの数は実に5000語以上あると言われています。
これは、第二位の中国語(300ちょっと)とは大きな開きがありますよね。
中国語もオノマトペが豊富ですが、それでも日本語の半分なんです。ちなみに英語は170ほどなんです。
日本語のオノマトペの中でも最難関と言われているもの、それが、
「シーン・・」
というやつです。我々日本人には意味がわかりますよね。
この「シーン・・」、つまり音が無いことを表する擬音語、外国人には理解不能なんです。
「音がないのに音があるって!?どういうこと??」
と頭の中は大混乱必至なんですよね。
1-6.日本語の方言は物凄く多い
日本語には実に多くの方言があります。
明治時代から戦前くらいまでは、方言は強制的に標準語に置き換えられて来ました。特に東北と沖縄方言は集中的に排除され、沖縄では学校で方言を話すと、「私は方言を話ました」という立て札を首からぶら下げさせられたようです。
ちなみに、外国語にも方言ってあるのでしょうか?
もちろんありますよ。
英語もそうです。
アメリカ英語やカナダ英語もイギリス人にしてみれば「英語の北米訛り(方言)」になります。
しかし、この日本語の方言の多さは世界でも稀にみる位のレベルなんです。
日本人にとっても、琉球ことばや青森弁は外国語のように聞こえますよね。
しかも、それらは日本の標準語とはかなり遠いので、外国人にとってみれば余計日本語が難しいと感じる原因となってしまうんです。
2.日本語は難しいだけではない
ここまで日本語の難しいところを取り上げてきました。
では、逆に他の言語と較べて簡単なところはどこなのでしょうか。
2-1.日本語の発音は簡単
日本語を習得した外国人が日本語の簡単な部分として挙げるのが「発音」なんです。日本語は舌を丸めたり、鼻から息を抜いたりといった動作が少なく、口先だけで発音できてしまうんです。
母音はa(ア)、i(イ)、u(ウ)、e(エ)、o(オ)の5つだけなのですぐに発音できてしまいます。
2-2.日本語の文法も意外にシンプルです
また、日本語の文法自体はさほど難しいものではありません。
動詞の不規則活用がほとんどなく「例外」を覚えなくても良いという利点もあります。
西洋の言語には動詞の変化などいろいろな規則・法則があるのですが、例外の多さは言語によって様々です。
特に英語はその割合が多く、動詞の変化はむしろ不規則な方が多いほどです。その点、英語の方が日本語よりも難しいと言えるのではないでしょうか。
英語の動詞を過去形にするには、「ed」を語尾に着けるのが基本ですが、例外として例えば「think(思う)」という単語の過去形は「thought」ですし、「sink(沈む)」の過去形は「sank」で過去分詞は「sunk」だったりします。(sinkの過去形はsunkとなる場合もあります)
日本語の動詞の不規則活用は、5個も無いくらいなので圧倒的に英語の方が複雑ですよね。
■まとめ
とはいえ、前半で挙げた日本語の難しい点と総合するとやはり日本語は欧米人にとっては極めて難解な言語になるなるようですね。
戦時中日本に滞在したジョン・モリスという外務省付けのイギリス人は日本語習得の難しさを、「エベレスト登頂に匹敵するくらい困難である」と述べています。その彼は実際にエベレスト登頂を2度も成功させた人でもあるのですが、その人をもってしてそう言わしめているのです。
このように、外国語を学ぶ際には違う目線で母国語のことを見てみるのも有効な手段なのです。言葉に対するチャンネル、目線を増やしていくこと、それが外国語を習得するということなのかも知れませんね。